まゆゆ引退で思い出す 百恵、ミスター…神話になったセレモニー
AKB48の「神7」の一人として人気を集めた「まゆゆ」こと渡辺麻友さんが芸能界から退いた。イベントはなく静かな引き際になったが、その潔さを称賛する声も出ている。しかし華やかなセレモニーがあってこそ、記憶にも残る。自分が昭和に見た印象深い引退を紹介したい。
「幸せになります」
1980年10月5日、日本武道館で開かれた山口百恵さんのファイナルコンサート。「ひと夏の経験」「プレイバックPart2」「いい日旅立ち」などこれまでのシングルヒットを並べた集大成のステージに。ラストソング「さよならの向う側」が始まる前に百恵さんから挨拶があった。
「私が選んだ結論。とてもワガママな生き方だと思いながら押し通してしまいます。8年間一緒に歩いてきた皆さんに『幸せに』って、そう言ってくれることが一番うれしくて。皆さんの心を裏切らないように精一杯、さりげなく、生きていきたいと思います。ワガママ聞いてくれてありがとう。幸せになります」
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百恵さんが一礼して曲が始まると、引退を惜しむファンの絶叫が響く。百恵さんも途中から涙声になり、音程があやしくなる。なんとか最後まで歌いきると、涙を拭きながら満足そうな表情を浮かべて客席を見渡す。白いノースリーブのドレス、髪の左右にも白い髪飾り。華美ではないが、上品な花嫁を思わせるステキな衣装だ。
インストゥルメンタルが流れる中、ステージ中央に白いマイクを置いて、そのまま背中を向けて奥に進んでいった。引退後の百恵さんは一切メディアに出ることなく、数年前にキルト作家の三浦百恵さんとして取り上げられたぐらい。その様子からファンに約束した通り、主婦としてさりげなく幸せに生きてきたことが見て取れた。
「永久に不滅です」
1974年10月14日、後楽園球場(現東京ドーム)。シーズン最終戦の後、ミスタージャイアンツとしてプロ野球を牽引した長嶋茂雄さんの引退セレモニーが行われた。試合結果を伝える電光掲示板に「ミスターG 栄光の背番号3」の大きな文字が浮かび上がる。スポットライトを浴びながらマウンドへ。スタンドを埋めた5万人の観客に向かって四方に一礼ずつ。設置されたマイクスタンドからマイクを外して手に持ち、挨拶が始まった。
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あの有名な「私はきょう引退をいたしますが、我が巨人軍は永久に不滅です」という歴史に残るフレーズを述べ、王貞治選手らから花束を受け取る。そしてトランペットによる物悲しい「蛍の光」が流れる中、巨人軍の選手たちと一人ずつ握手。ミスターは涙にぬれて紅潮した顔をタオルで拭き、万雷の拍手に送られながらグラウンドを後にした。
実はあの名言の後、挨拶は以下のように続いた。「ほんの微力ではありますが、巨人軍の新しい歴史の発展のため、栄光ある巨人の勝利のため、きょうまで皆様方からいただいたご支援ご声援を糧としまして、さらに前進していく覚悟でございます」
V9以上のもの
残念ながら監督に就任したミスターは翌年、球団初の最下位に沈む。トレードと地獄の伊東キャンプで戦力を底上げして翌々年からセ・リーグ連覇を果たすが、日本一は阪急に阻まれる。監督として初めて日本一に輝くのは再登板した後の1993年のことだった。
自分にとって「四番サード」といえば中畑清しかいない。現役時代をよく覚えていないため、ミスターの凄さがイマイチ実感できないのだ。しかし、サービス精神が旺盛なミスターのおかげでプロ野球、世界陸上、オリンピックを何倍も何倍も楽しめたのは間違いない。
V9に匹敵する巨人軍の栄光を取り戻すことはなかったが、それ以上のものをいただいてまする。ありがとうございます。
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