「メディア総出」でやります? 木下優樹菜ここまで叩くか
タピオカ店と係争中の木下優樹菜さんが芸能界を引退した。活動再開の数日後に引退するという急転直下の事態に憶測が広がっている。
タピオカ騒動 まだ藪の中
黒澤明監督の映画「羅生門」(1950年)は、当事者の証言こそ最も当てにならない、という体面にこだわる人間の矮小さを描き出した名作だ。
舞台は戦乱、天災、疫病で世が乱れきった平安末期の都。大通りに建つ羅生門も半壊し無残な姿を晒す。二階には引き取り手のない死体が常に四つ、五つは転がっているあり様だったとな。
そんな荒廃した時代を象徴する出来事が起きる。山越え途中の夫婦が一人の盗賊に襲われたのだ。妻は犯され、夫は殺された。裁きの場に出た三人(夫は巫女に憑依)はそれぞれ都合の良い陳述をする。
決闘の末に殺害したと武勇伝のように語る盗賊。犯されたことをなじられ夫を思わず刺殺したと泣く妻。犯された後の変心に絶望して自害したと死してなお妻を責め立てる夫。
目撃者が語る真相は三人の陳述とはまた別のものだった。しかし、その証言すら全てを語っていなかったという、話が進めば進むほど人間不信を募らせていく作品である。
「引退するほどのことか」
映画の話はここまで。数日前、木下優樹菜さんの芸能界引退を巡り、知人とつまらぬ言い争いをしてしまった。
木下さんがタピオカ店に送ったとされるインスタグラムのDMについて「バカな行為だが引退するほどのことなのか」という知人の疑問に対し、「店一軒を潰しかけたのだから当然」と強く反論したのだ。
さほど関心のない話題で空気を重くするのが嫌で、程なくしてどちらともなく別の話題に移したが、後味の悪さが残った。
小さな事務所だから?
身近に店舗経営者が多かったことで、ついつい感情的になってしまったのだが、時間をおいて考え直してみると、相手の言うことにも一理あった。主な疑問点は次の二点になる。
そして「(上記の二人が所属する吉本興業に比べて)小さな事務所だからマスコミも叩きやすい。バッシングに耐えきれず、事務所は(木下さんを)切ったのではないか」という推察だった。
溺れた犬を叩く習性
実は「タピオカ騒動」については詳細を知らない。情報番組やネットニュースでチラ見した程度。ましてや騒動の関係者を直接知るわけもない。
なのにいつの間にか「弱い立場の店舗を影響力のあるママタレが脅した」という構図が頭の中で揺るぎないものとして出来上がっていた。
外圧がない限り、溺れた犬を徹底的に叩く本能を備えたマスコミの印象操作に踊らされていたのだろう。あまり関心のないニュースこそ、こうした罠に陥りやすいのかもしれない。
まずは報道を疑え!
芸能活動再開についても「ふつうは和解してからじゃないの」(和田アキ子さん)などといわゆる大御所から批判が相次いだ。
逆にいえば裁判所の判断がまだだからこそ、推定無罪で自粛を求めるのは筋違いとも言えるのにだ。視点を変えれば「事務所総出」ならぬ「メディア総出」で潰しにかかったように見えなくもない。
新たなスキャンダルを回避したかった▽嘘を繰り返す木下さんを見放した――とする情報が飛び交っているが、それすら火の粉を払うために事務所が流した偽情報の可能性だってゼロではないのだ。
いずれにしろ、いまのところ真相は藪の中。タレント生命を自ら絶った木下さんをこれ以上追い込まず、裁判の行方を見守るべきだろう、と言いつつこんなブログを書いた自分のことは棚にあげる。