YMOの画期的なコンセプト 白黒を超えた幻惑「黄色魔術」
ロック、ポップスの魅力の一つは他ジャンルの音楽を巧みに取り込んでいるところ。聴いているだけで知らず知らずのうちに自分の世界が広がっている。
初めて自分の小遣いで購入したLPレコードがイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」(1979年)だった。「TECHNOPOLIS(テクノポリス)」と「RYDEEN(雷電/ライディーン)」が爆発的に売れていたときでミーハー買い。
もちろんこの2曲が目当てで購入したのだが、一番耳に残ったのは2曲の間に挟まれていたA面の2曲目「Absolute Ego Dance(アブソリュート・エゴ・ダンス)」だ。
スタイリッシュで無機質な楽曲が並んだ中で、細野晴臣さんが作ったという珍妙なリズムとメロディー、途中に入る女性の合いの手が他の曲から浮きまくってて、気になって気になって仕方なかったのだ。
購入してからしばらくは東北の片田舎で、アイサ~、ハイサ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…♪と一人でよく口ずさんでいた。周囲からは変な子供だと思われていたに違いない。
実際に何と言ってたのか、さっぱり分からなかったし、これが沖縄民謡からインスパイアされたものだと気づいたのもずっとずっと後になってからだったが。
沖縄音階の定着
時は過ぎ、坂本龍一さんのアルバム「NEO GEO」(1987年)に収録された表題曲や「OKINAWA SONG - CHIN NUKU JUUSHII(ちんぬくじゅうしい)」、次作「BEAUTY」(1989年)収録の「安里屋ユンタ」「ちんさぐの花」のカバーで沖縄民謡にさらに浸かっていく。
BEGIN、THE BOOMも現れてやがて自分の中で沖縄民謡はロック、ポップスの一ジャンルとして定着していった。とっくの昔から嘉納昌吉さんがいるだろ、という指摘もあろうが、さすがに子供には渋すぎた。
恥ずかしながらYMOのコンセプトに「外国人から見た日本」「白人が作る白魔術、黒人が作る黒魔術に対して、黄色人種が作る黄色魔術」があったと知ったのは結構最近である。
細野さんや坂本さんのYMO以前からのワールドミュージックに対するアプローチを知っていれば、「Absolute Ego Dance」と沖縄民謡との類似にも気づいていたのだろうが、小学生には早すぎた。
一方、何も知らなかったぶん、合いの手に加えてリズムやインド風のメロディーのユニークさが染み入ってきたのだろうな、とも思う。無垢で純真な魂は真砂のように何事も吸収していくのだ。
美白は人種差別か?
最後に話はまったく変わる。人種差別抗議デモが広がる中、アメリカの医薬品会社がアジア向けの美白化粧品を販売中止することになった。
日本では「肌の白さは七難隠す」と言われて古代から色白が尊ばれてきた。日焼けした小麦色の肌が流行ったことも。
ラップなど黒人文化に人気が集まると共に褐色の肌に憧れる若者が増え、いつしか日焼けサロンまで現れるようになった。
黄色といったら日本人♪
思えばこれまで日本人は外見を白人、黒人に近づけることに励み、黄色い肌を誇らしげにアピールする時流はなかったような。
なのに自ら「イエロー」と名乗ったYMOに卑下や露悪的な趣味はまったく感じられなかった。
そして世界に作品が受け入れられ、世界中のアーティストからいまだにリスペクトされているのだから、本当に画期的なユニットだったのだな。
最後に懐かしいゲームを一つ。マジカルバナナ♪ バナナといったら黄色♪ 黄色といったら日本人♪ などと自然に遊べるようになったらいいな。