精神病棟で「ロケットマン」が語る破滅的半生
Amazonプライムに入って以来、サブスクリプションの中でしか映画を見なくなった。それまではGYAOの無料配信から選んでいたので、だいぶ幅は広がってはいる。
これもサブスク地獄か
一方、月額500円とはいえ課金してることで、ますます新たな出費をためらうようになった。ベースが0円だった頃はどうしても見たい作品は課金してたので、逆に幅が狭まったとも言える。
そんなときに「ロケットマン」(2019年)がラインナップに入った。エルトン・ジョンさんの半生を描いた伝記的な音楽映画だ。1970~80年代辺りの洋楽をこよなく愛する自分には未見の「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)を先にした方がより楽しめる気がする。
払うべきか払わないべきか。配信動画を見るだけで余計な悩みが増えてしまった。これも「サブスク地獄」の一形態か。せこい話だけどね。
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そして「ロケットマン」を見終わっての感想。「ボヘミアン…」は見てないが十分楽しめた。
厳粛な面持ちをしたスタッフがサークル状に並べられた椅子に座っている。その一室にド派手なステージ衣装のエルトンが入ってくるところから映画は始まる。
ツアーの打ち合わせか反省会かと思いきや、エルトンは父親からハグもしてもらえなかったという幼い頃のトラウマを語り出す。精神病棟における集団療法の一環のようだ。
エルトンは容姿のコンプレックス、同性愛に対する偏見、マネージャーでもあったパートナーの裏切り、スーパースターとしての抑圧などから薬物、アルコール、性交、買い物など多くの依存症となったとされ、それらのエピソードも赤裸々に語られていく。
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リアルタイムでエルトンさんの音楽を聴き始めたのは「ブルースはお好き?」(1983年)から。既におじさんとなり、映画の中で母親から「薄毛の家系。20歳にはツルツル」と忠告されたようにAGAの症状は進行。カツラの使用を揶揄する英メディアに苦情したことがニュースになっているような時期だった。
ヒットチャートの上位に名を連ねるが全盛期は過ぎており、おじさん然とした風貌。バラードが多かったことからも「伝説的なロックスター」の称号がしっくりこなかった。ミックもポールもジョージもボウイもクラプトンもまだまだカッコよかったしね。
またエルトンさんの場合、「クロコダイル・ロック」(1973年)に代表されるオールディーズ風ロックンロールにしても、奇抜で派手な衣装にしても、良識あるエンターテイメントの範疇に見え、ロックに不可欠な「陰」の部分を感じさせなかったこともある。
今回映画を見て、スキャンダルに事欠かない破滅的な半生を知り、認識を改めた。底抜けに明るい黒人音楽が多いのは、虐げられた歴史が長いからだと語っていた友人がいたなぁ。エルトンさんの音楽的な才能は最初から疑いようがないのは言うまでもない。
ドキュメントではない
製作総指揮にエルトンさんが入っているが、ドキュメンタリーになってるわけではない。治療のなかで見えた心象風景としての半生という表現がしっくりくる。時系列が合わないエピソードが多々あるが、それを指摘するのは野暮というものだ。
ラスト近くで、集団療法を経て過去のトラウマを乗り越えたエルトンが皆の祝福を受ける。ヱヴァのシンジのように。やがて社会の同性愛への理解が深まり、エルトンさんは配偶者を得て、養子を迎えるなど幸せな毎日を送っているという。
完全寛解とはならず、買い物依存症はいまだに治らないエピソードが最後に紹介されているが、この映画の製作過程こそ、エルトンさんにとって最終的なトラウマとの決別になったのかもしれないな。
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