ビートルズの名曲も? 差別撤廃は当たり前でも極論は怖い
米ミネアポリスの事件を発端にした人種差別抗議デモ。差別撤廃は人類共通の課題として当たり前の目標だが、暴徒化した一部による略奪・破壊行為に続いて、頭の痛くなる現象が相次いでいる。
アメリカ映画「風と共に去りぬ」(1939年)といえば知らない人がいない名作の一つ。奴隷制廃止につながる南北戦争を軸とした壮大な物語で、南部(奴隷制存続を主張)の富裕層に生まれた女性を主人公にしている。
時代背景から召し使いの女性をはじめ、奴隷として黒人が大勢出てくるのだが、この辺りが人種差別を表現しているとして動画配信サービスから削除されたという。
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映画を見た人なら分かってもらえると思うが、作中の白人がとくに魅力的というわけではなく、むしろ虚勢など弱い面も描かれている。主役のスカーレット・オハラに至ってはワガママ放題の性格がかなり強調されている。
スカーレットに誰も意見できない中、唯一箴言していた召し使い役の女優はアカデミー助演女優賞を獲得。製作年を考えれば黒人の地位向上に結び付いた面もある作品のような気もするのだが、また別の視点もあるのだろう。
「ピラミッドを壊せ」
次にデビューから十数年が経過したグラミー賞も受賞しているカントリーバンド、レディ・アンテベラムが奴隷制度を想起させるとして、「レディA 」にバンド名を変更した。
「南北戦争前」という意味のアンテベラムには、「南部の文化を懐かしむ」というニュアンスも含まれており、その中に奴隷制度が含まれているとか。正直ピンとこない。日本に置き換えれば、近世以前を想起させる言葉は、使えなくなってしまうということか。
さらにイギリスの活動家が「エジプトのピラミッドは奴隷を使って造ったものだから破壊せよ」と要求している、との報道もあった。ピラミッド建設は賃金が支払われていた公共工事だったという説が有力なのは置いておき、極論が飛び交う状況が恐ろしい。
ペニーが奴隷商人でも
何より驚いたのは、イギリスの港町リバプールで、ビートルズの歌で有名な通り「ペニー・レイン」に改名の動きが出ていることだ。奴隷商人の名前に由来していることが理由という。
ポール・マッカートニーさんが作ったこの曲には、この地で育ったメンバーの少年時代の思い出が綴られている。その中に差別や奴隷を連想させるものは一切出てこないように思えるが、歌うことも聴くことも禁じるつもりなのか。ビートルズのメンバーをはじめ、黒人ミュージシャンに敬意を払わない音楽アーティストなどいないだろうに。
差別された側の心情は計り知れないが、歴史や文化遺産まで消してしまうのは、極論としか思えない。突き詰めれば、かつて植民地政策を取ってきた先進諸国は全て滅びてしまえ、となりかねないよね。どうなんだろ。