旧メディアの権威は崖っぷち…フジサンケイの世論調査不正
フジテレビ系列のFNNと産経新聞による合同世論調査で不正が行われていた。地味なニュースだったけれど、オールドメディアと呼ばれるテレビ、新聞の権威が崖っぷちに来ていることをあらためて実感した。
このニュースを知ったとき、まず考えたのは「数字を盛ったのか?」ということ。これまでフジテレビと産経は安倍政権寄りの報道が多く、「ついに来るところまで来たか…」と妄想を膨らませてしまった。
しかし、ニュースをよく見ると委託先の下請会社の社員が「利益を増やしたかった」「オペレーター集めが難しかった」との理由で、調査全体の十数%に当たる回答について架空のデータを入力していたそうだ。
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経費節減から委託費を相当ケチったに違いない。さらに中抜きされてる下請だし、前述の理由はさもありなん。不正は委託を受けた昨年5月から14回分にわたり、安倍政権の支持率は不正前と比べてむしろ低めだったらしい。
検察幹部と記者の賭け麻雀を取り上げたブログで「産経残酷、時事地獄」というワードに触れたが、産経に限らず、大手新聞でのリストラはたびたび伝えられている。
恩恵は新興メディアへ
歴史の浅いネットメディアに対して、オールドメディアが権威ある存在として扱われているのは、その取材基盤にあるだろう。
費用対効果を考えず全国に取材拠点を置き、いざ大事件が発生したとなれば、大量に記者やカメラマンを投入。かつては臨時支局まで開設したこともあった。
ところがネットメディアの興隆に伴って視聴率、発行部数は落ち込み、広告料も減少の一途を辿っている。自前のネット媒体による収入は本業の落ち込みを補うには単価が安すぎ、大半が「焼け石に水」の状態と聞く。
そして、大手ならではの取材体制が生み出した記事の恩恵をより受けるのは、自社メディアではなく、配信先(ヤフーニュース等)や、無断で二次利用したまとめサイトなどの運営者となった。この状態ではメディアとしての矜持を保つのもしんどかろう。
ネットが情報源では
オールドメディアが社会インフラとして、あくまでも速報にこだわるのも辛いところ。火事や事故などの現場の状況については、大手メディアすらツイッターから拾った情報で埋め尽くされることがある。
週刊誌のように特ダネ狙い一本でいけば、これまで蓄積したノウハウも生かされるのだろうが、ネットウォッチに関しては、自宅で常に待機中の筋金入りのウォッチャーにかなうはずがない。
市井のウォッチャーには誤報も多く、中には深刻な名誉毀損につながるものもあり、問題ありありなのだが、SNS等からの情報特定の速さは抜きん出ている。かくしてオールドメディアの権威は落ちていく。
新興は真似できない…
そんな中、大規模な世論調査は新興メディアには真似できない(真似したくない)代物だった。
膨大な経費をかけて電話調査を実施し、支持率を出したり、政策に対する評価が分かったところで、アクセスが集中するような大きなニュースになることは少ない。
最近では、右派の産経の世論調査なのに安倍政権の支持率が、左派の朝日や毎日の調査よりも低かったことが話題になったぐらい。皮肉なことにこの話題も捏造だった可能性が高いわけだが。
オールドメディア自体が膨大な取材拠点などを抱えきれなくなる中、NHKは唯一、採算度外視で湯水のごとく経費を使っているようだけど、国営だしな。そんな民間メディアは、もう出てこないのかも。しれないねぇ…。