集団免疫が魅力的に見えてきた…外出自粛あと一カ月?
アカデミー作品賞を獲得した映画「スラムドッグ$ミリオネア」(英、2008年)に出演したインドの俳優が亡くなったと聞いて、てっきりクイズ番組に挑む主役、主役の兄、ヒロインを年代別に演じたいずれかと思ったら、主役を厳しく取り調べた警察官役だった。
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、インドで実施した封鎖措置のニュース映像を見て、この映画のことを思い出していたところだ。武装した警官隊が外出禁止令に従わない住民らを取り囲んで容赦なく殴り付けていた。いやはや恐ろしい国だと震えていた次第。
「スラムドッグ」俳優死去
亡くなった俳優はイルファン・カーンさん。53歳だった。訃報で初めて名前を知ったが、スピルバーグ総指揮の映画「ジュラシック・ワールド」(米、2015年)にも出演しており、インド国内だけでなくハリウッドでも活躍していたという。
「スラムドッグ$ミリオネア」では、大金のかかったクイズ番組で不正をした容疑で拘束された青年をイルファン演じる警察官が取り調べる。部下に命じて宙吊りにした青年に電気ショックを与えるなどして自白を迫る。
ネタバレにつながる筋には触れないが、映画の評価を左右する大事な脇役だった。
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印象に残る不衛生さ
映画館で見た当時、苛酷な拷問は過剰な演出だろうと思っていたものの、前述したニュース映像を見てリアリズムだったのかと考えを改めている。
「スラムドッグ…」は、アカデミー賞の最優秀に当たる作品賞を獲得して話題になったが、当時の報道では、題材となった実在するクイズ番組や、インドでの映画産業の隆盛に焦点が当たっていたように記憶している。
いま甦るのは序盤に印象深かったアジア最大のスラム街を抱えるムンバイの不衛生さ。生ゴミや糞尿を垂れ流した川で体や食器を一緒に洗う。汚い環境でこそ免疫力がつくという思考だったので、あまり気にしてなかったのだが。
自粛あと一カ月延長?
そして今、新型コロナウィルスでは既に900超のインド人が亡くなってるわけで、不潔な環境で培った免疫力なんぞ、未知のウィルスの前では無力に等しかったのだろう。
一方で、ニューヨークで4人に1人から新型コロナウィルスの抗体が確認されたとか、公式には認めていないもののスウェーデンが行動制限しないのは集団免疫を目指しているからとのニュースも入ってくる。
緊急事態宣言の一カ月延長も確実になったようだ。自粛生活があと一カ月以上も続くなら、「感染率は少ないぞ。外出して集団免疫つくっちゃえよ」という悪魔の囁きが聞こえてきそうで怖い。
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