グロだけじゃない「自殺サークル」に込めたメッセージ
なるべく前情報を入れずに映画を見ることが多い。どんでん返し等を少しでも新鮮に味わうためだが、序盤で変なところに着目してしまうと、作品が十分に楽しめなくなることもある。そんな失敗談を一つ。
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園子温監督の「自殺サークル」(2002年)を見た。吹石一恵さん、吉高由里子さんが姉妹役で出演した「紀子の食卓」(2006年)の前編に当たると聞いていた。
しかしテイストはまるで違う。自分のように「紀子…」→「自殺…」の順に見るなら独立した作品として捉えた方が消化しやすいと思う。
まずはグロ。その手の園監督の作品では「地獄でなぜ悪い」(2013年)「リアル鬼ごっこ」(2015年)を見てたから、ある程度は覚悟していた。それでも想像以上でトラウマになりそう。
「地獄…」で見られたユーモアは一切なく、途中でストーリーが混沌としだしたときには、グロいシーンを撮ることだけが目的だったのか、と思ってしまったほどだった。
石橋凌さん、永瀬正敏さん、麿赤兒さんとそうそうたる俳優陣が演じていることで、序盤で刑事らの捜査の進展に焦点を絞って鑑賞してしまったが、これが間違い。
「紀子の食卓」と真逆
「紀子…」と違って、いつまでも事件の背景というか、黒幕的なものは浮かんでこない。謎解きのつもりで見ていると、作品を消化しきれなくなる。
ただし、最後まで見れば作品のメッセージは単純明快。作品中に張られた伏線はほぼ未回収でも、テーマとなっている集団自殺を真っ向から否定しており、意外と健全な幕切れに感じた。
グロいシーンはなくてもラストに修羅場を迎えた「紀子…」とは真逆の印象。また「紀子…」はレンタル家族、さらにはその背後に見えるカルトに対しても、明確な是非を示さなかったように思えた。
というわけで視点を変えて「自殺…」をもう一度見たいのだが、トラウマのシーンが怖くて躊躇している。どうしたものか…。
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