ホリエモン知事ある? 田中康夫を大逆転させた選挙戦
ホリエモンこと堀江貴文さんの出馬が取り沙汰される東京都知事選。現職が圧勝するといわれてるが、過去には政治経験のない著名人が大逆転した知事選もある。田中康夫知事が誕生した20年前の長野県知事選を振り返りたい。
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長野県では1998年の冬季五輪開催後にバブル崩壊が遅れてやってきた。ひっきりなしにあった公共工事は激減し、観光需要も落ち込んだ。
開催から一年後には招致疑惑が浮上し、県内は騒然とする。五輪会場の集まる県北地域に多くの県予算が充てられてきたことで、ただでさえ他の地域住民の不満はくすぶっていた。
世紀の祭典を終えた燃え尽き症候群ともいえる諦めにも似た閉塞感の中、2000/10/15に投開票される知事選を迎えることになった。
県庁が牛耳る信濃の国
現職の吉村午良さんは早々に不出馬を表明して副知事を後継に指名。他に立候補予定者は共産と泡沫しかなく、知事選は事実上の信任投票になると目されていた。
吉村さんもその前任者も副知事経験者で、二人合わせて11期41年にわたり君臨。この間に県庁を頂点に市町村、地方財界が続く堅牢なピラミッドを作り上げたとされる。
長野県警察本部が県庁舎内に間借りするかのように置かれていたことも、県庁の強大な権限を表す象徴と見る人もいたくらいだ。地元メディアですら県政批判は控えていたと聞く。
ここでまた副知事では閉塞感を変えることはできない――。危機感を持った財界の一部が「準備期間がなくても戦える候補」として県出身の有名人に声をかけていき、約1カ月前に担ぎ出したのが作家の田中康夫さんだった。
MLでつながる勝手連
田中さんはデビュー作「なんとなく、クリスタル」がベストセラーとなり、テレビ、ラジオで活躍するタレント文化人でもあった。神戸空港の反対運動に関わっていたものの政治経験はなかった。
組織のない田中さんの選挙運動を支えたのが、インターネットを通じてメーリングリストでつながった市民グループによる「勝手連」だった。ネットが選挙の結果に大きな影響を与えた初めての事例だったかもしれない。
対する副知事陣営は複数の怪文書を出していたようだ。内容は、田中さんが学生時代にサークル費の使い込みで処分を受けたこと(事実か不明)などだ。
田中さんが雑誌の連載コラム「東京ペログリ日記」で、自身の行動を露悪的なまでに公開してたこともあり、ダメージは少なかった。
むしろ「人格攻撃」として副知事陣営に批判が集まる。支援する婦人会が、田中さんが写真付きでコメントを寄せていた成人向け雑誌を見つけ出し、 メディアにカラーコピーを配布したこともあった。
デジタルVsアナログ
デジタルVsアナログともいえる戦いの結果は、田中さんが副知事に大差をつけて勝利。しばらくして、土木技監ら複数の県職員が選挙違反で逮捕されるオマケまで付いた。
SNSという言葉すらなかった時代にインターネットが下馬評を覆したのだ。新型コロナに加えて五輪中止が濃厚となり、閉塞感が漂っている今年の都知事選と共通点もある。
現職の小池百合子さんが圧勝するといわれているが、堀江さんは「ネット投票なら」と出馬の可能性をほのめかしている。日本屈指のインフルエンサーなら、ひょっとして?
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