政治家ゲストには期待できない 自画自賛、質問の核心をスルー
情報番組に大臣など大物政治家をゲストに呼んで直接質問をぶつけることは多い。大抵の場合、判で押したような通り一遍の回答に終わってしまう。
「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系、毎週土曜午前8時~)の5/2の放送に新型コロナ対策担当・経済再生大臣の西村康稔氏が約1時間にわたり出演した。司会の辛坊治郎さんからそれなりの質問が出たものの、案の定、見どころはなかった。
Q.緊急事態宣言の延長はなぜ全国で1カ月間なのか。都市部、2週間ではダメなのか
全国一律については知事会から強い要望があった。どこかを解除すれば観光客が押し寄せるということ。感染者をゼロにすることは難しいが、クラスター班が対応できるまでに減らさなければならない。(コロナ治療薬として)レムデシビル、アビガンが承認されるのもそう遠くない。そういったことを総合的に判断した。(西村大臣)
恐らく辛坊さんは段階的な解除はできないのかを問うたはずだが、明確な回答になっていない。
Q.実効再生産数(感染者1人がウィルスを移している人数)が緊急事態宣言を出した時点で1未満(減少傾向)だった。そもそも宣言を出す必要はあったのか
3月下旬の三連休でかなり緩んで、4月上旬から10日にかけて感染者数が増加し、このままではオーバーシュート(爆発的感染)するという専門家の判断があった。徐々に減ったのは緊急事態宣言の効果。後から実効再生産数が1を切っていたことが分かった。(西村大臣)
質問の前に3月末に1.7だった東京の実効再生産数が4/10には0.53、全国では0.71だったことが示され、辛坊さんが「ヨーロッパでは緊急事態宣言を解除する数字」とコメントしていた。数字自体は政府の専門家会議が出したものだが、自粛継続のモチベーションを著しく減退させる。打ち消すには西村氏の説明では不十分だろう。
Q.専門家会議には感染症の専門家しかいない。感染症の専門家はゼロリスクを取る。大阪府知事が専門家会議に経済の専門家も入れるよう提言しているが、政治決断は感染症の専門家と別の次元でもいいのではないか
事業者が厳しい状況にあるが、補正予算も成立したので、この期間は事業、雇用、生活をしっかりと守るというスタンスでいきますので、一日も早く経済支援をします。この間は8割接触削減を13都道府県で引き続きやってもらう。解除は必ず見えてくる。(西村大臣)
質問にまったく触れていないに等しい。
縛りが多いのか?
続いて成立したばかりの補正予算に話題が移ると、用意したフリップを出して饒舌に語りだした西村大臣。補正予算は約26兆円でも財政投融資、税・社会保障を支払わなくてもよくなるので実質100兆円を超えている、と自画自賛した。
その予算の話題でも都合の悪い部分ははぐらかす。辛坊さんはコロナ収束後を見越した景気対策として、補正予算に観光キャンペーンが含まれていることを疑問視した。
Q.Go To キャンペーン、いまやるべきことか
確かに感染者数ゼロにするのは難しい。小さな波であればクラスター班で押さえ込める。そう遠くない将来、解除するときが来る。そのときへの準備。希望をもっていただくことが大事。(西村大臣)
こちらもまったく答えていない。
コメンテーターのマーケティングライター、牛窪恵さんが「スピードというものが分かってらっしゃるのか。首吊るしかないという声がたくさん届いている。第2弾以降、システムは変わるのか。溺れている人に浮き輪を投げても助からない命もある。もう少し想像力を」と訴えたが、返答のないまま西村氏の退席時間となった。
大物政治家をゲストに呼ぶ場合、質問を事前に通告したり、それ以外に質問しないなどの縛りがかかっているケースが多いのだろう。ついつい見てしまうが、今回のように残念な結果となる。